【かなり危ない】フリーランスエンジニアは競業避止義務について知っておこう。
2021.08.01
フリーランスエンジニアになる上で厄介なのが法律トラブル対策。契約書を締結する段階はもちろんのこと、業務中や、請求書のやりとりなど、様々な場面で法律トラブルのリスクは存在します。
その中でも危険度が高いのは、競業避止義務に関する法律。企業によって様々な契約書がありますが、もし依頼主側にしかメリットしかない競業阻止義務を締結してしまうと、最悪の場合、他の案件が受けられなくなる恐れがあります。
フリーランス白書2020のデータによると、フリーランスで働く人の約9割は、2社以上と取引があるみたいです。その中でもし1案件しか受けられなくなってしまったら、生活上かなり厳しいですよね。
ですので今回はフリーランスエンジニアに関する競業避止義務について解説していきたいと思います。そもそも競業避止義務が生まれた背景はもちろん、フリーランスが依頼主側と不正な競業避止義務を締結してしまった場合、どの法律で対処するのか、などもまとめておりますのでぜひ読んでみてください。
競業避止義務について知っておこう
それでは競業避止義務とは何かについて解説していきましょう。競業避止義務をかなり簡潔にお伝えすると、「ノウハウを持ち出さないように、他の企業への就職を制限する特約」ことです。ちなみに、競業避止義務は必ず締結する必要性はなく、契約書の作成者が状況に合せて追加するか否かを判断することが可能です。
昨今では、人材の流動が盛んに行われており、エンジニアが転職や起業を行うことがかなり容易となりました。その反面、企業側が恐れているのが、情報・ノウハウの流出です。
特にエンジニアの場合、会社の基幹システムやサーバー情報、アプリ設計情報など、会社にとって重要な情報を扱う職種ですし、もし情報・ノウハウが流出して、競合サービスが乱立したら、売り上げにも影響が出てしまいます。ですのでエンジニアの場合、依頼主は資本金が大きくなればなるほど、競業避止義務を締結したがる傾向が強いです。
しかし競業避止義務は、かなり前から憲法22条の「経済活動の自由」に違反するのでは、という裁判がありました。具体的には平成24年6月13日に実施された東京高判の判例が有名です。そこで経済産業省は、他の判例も参照し、「競業避止義務契約が有効であると判断される基準」を明確にしたのです。その基準がこちら。
①守るべき企業の利益があるか
②従業員の地位
③地域的な限定があるか
④競業避止義務の存続期間
⑤禁止される競業行為の範囲について必要な制限があるか
⑥代償措置が講じられているか
参考:経済産業省『競業避止義務契約の有効性について』
上記6つの基準が揃っていた場合、競業避止義務は有効と判断されます。
また同資料では、経済産業省が判例を考慮した上で、下記のようにまとめてくれています。
もし競業避止義務は含まれている契約書を締結する場合は、上記の内容を事前に確認しておくと良いでしょう。
フリーランスならではの危険性
しかしここからが危険なところ。上記の報告書で紹介されている判例はあくまで「労働者」が主体であるケースなのです。今回はあくまで競業避止義務に関してなので、労働基準法の詳細は別の機会にまとめますが、フリーランスエンジニアは労働基準法9条で定められる「労働者」の条件に該当しないのです。
何が言いたいのかというと、労働基準法が定める「労働者」でさえ、競業避止義務の撤廃が認められない可能性がある状況下です。フリーランスの場合は「労働者」ですらないので、法律的立場上、さらに裁判に負ける可能性が上がってしまうのです。
(※上記に関しては判例がございませんのでご了承くださいませ。)
しかし、このままでは、フリーランスで働くのは非常にリスクが高いですよね。また憲法22条「経済活動の自由」の違憲性も拭いきれません。そこで労働基準法の代わりにフリーランスを守ってくれるのは「独占禁止法」と「下請法」です。下記では競業避止義務と関連度が高い「独占禁止法」について解説していきます。
不当な競業避止義務から守る「独占禁止法」
よく独占禁止法と聞くと、一昔前のMicrosoftや現在問題となっているGoogle・Amazonなど、法人側のイメージが強いですが、公正取引委員会によると、独占禁止法は「公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすること」を目的としています。ですので今回のように、フリーランスの競業避止義務に関しても独占禁止法の下に扱われます。
前述にも記載しましたが、フリーランスは労働基準法9条で定める「労働者」に該当しないため、独占禁止法はその代わりを担う、フリーランスにとって大切な法律なのです。
公正取引委員会はフリーランスの方が安心して働けるように「人材と競争政策に関する検討会報告書」をまとめています。ガイドラインの13ページに競業避止義務について言及しているのですが、その中では競業避止義務が「独占禁止法第2条第9項第5号ハ」に違反する要件について述べています。
【競業避止義務が独占禁止法上、問題となり得る要件】
●発注者( 使用者) が役務提供者に対して義務の内容について実際と異なる説明をし,又はあらかじめ十分に明らかにしないまま役務提供者が秘密保持義務又は競業避止義務を受け入れている場合には, 独占禁止法上問題となり得る。
●優越的地位の濫用の観点からは,優越的地位にある発注者(使用者)が課す秘密保持義務又は競業避止義務が不当に不利益を与えるものである場合には,独占禁止法上問題となり得る。
かなり読みにくいかと思いますので少し噛み砕くと、競業避止義務の内容について「異なる説明をした」「十分に明らかにしていない」「不当に不利益を与える」場合は、競業避止義務が独占禁止法上、問題となり得ます。
法律トラブルは弁護士に相談できる体制を整えておこう
前述したように競業避止義務は、不当性が認められると独占禁止法によって撤廃される可能性がありますが、もし撤廃を求める場合は、ご自身で弁護士を立てて、訴訟を起こす必要があります。決して待っているだけでは撤廃されません。
実際にフリーランス白書2020のデータを見てみると、フリーランスの方が法律トラブルを起こした際、真っ先に相談するのが弁護士ではなく「知人・友人」だそうです。このデータからわかるようにフリーランスの方は、弁護士に相談するケースが23.5%と少ないのです。
現在では、今回の独占禁止法を始め、フリーランスの味方をしてくれる法整備が整ってきましたが、いくら法整備を整えたとしてもフリーランスエンジニア自己完結しないで、然るべき専門家に相談して頂かないと決して撤廃されないのです。
ですので当社では、フリーランスエンジニアの方は、ご自身で弁護士とコミュニケーションが取れる体制を整えておくことを推奨しております。少々リスクの話ばかりして大変恐縮ですが、法律トラブルで一番もったいないのは、危険な状況をひっくり返すチャンスがあるにも関わらず、相談しないでそのまま泣き寝入りしてしまうこと。そのために世の中には法律の専門家がいますので、些細なことでも相談できる体制をご検討してみてください。
トラブルが起きやすい案件交渉が苦手なら
とはいえ、いきなり弁護士を探すのは困難ですし、生活するために案件獲得に向けて動く必要もありますよね。しかし、法律トラブルで最も多いのは、案件獲得時の交渉段階で起きるもの。その要因として、リクルートワークス研究所のデータによると、フリーランスエンジニアのほとんどは正社員を経験してから独立するため、案件獲得時の契約交渉する機会に恵まれていないことが挙げられます。
そこでぜひご検討いただきたいのが、案件交渉をプロにお任せすること。本来、フリーランスエンジニアはコードを書いたり、プロジェクトの要件定義を考えたりするお仕事ですが、何かの拍子に法律トラブルを起こしてしまうと、その対応に追われてしまい、やるべき仕事に時間が割けなくなってしまいます。
そのリスクを軽減してくれるのが「フリエン」のような営業代行サービス。案件紹介はもちろんのこと、フリーランスで働く人が苦手視するような法律・ファイナンス・会計周りのご相談も可能です。今回のような契約トラブルはもちろんのこと、よくある未払いトラブルの弁護士保証も検討可能です。
フリーランスエンジニアは組織に属しません。ただでさえ1人で抱えがちなのです。その結果、本来求めていた「自由」が失われたら元も子もないでしょう。そんな時は「フリエン」に相談してみてはいかがでしょうか。
※新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、フリエンを運営するアン・コンサルティング株式会社では、WEB(Googlemeet、Zoomなど)ならびにお電話によるご面談(カウンセリング)をご案内差し上げております。