フリーランスは自分で退職金の代わりを用意する必要がある!利用できる制度を解説
2021.04.20
フリーランスは事業主であるため、退職金制度はありません。
この記事では
フリーランスになったが退職金のことは全く考えていなかった
歳を取ってからまとまったお金が入らないのは不安
という方のためにフリーランスの退職金について解説していきます。
具体的には
そもそも退職金はどのような制度か
フリーランスが利用すべき2つの退職金制度とその違い
フリーランスが利用すべき小規模企業共済のメリットとデメリット
を解説していきます。
フリーランスには、もしもの備えとして役立てる目的だけでなく、それ以外の目的にも活用できる制度が準備されています。
この記事が参考になれば幸いです。
フリーランスにはない 退職金制度を解説
退職金とはどんな制度であるか知っていますか?
なんとなく、定年退職前に会社からまとまったお金がもらえるという認識の方も少なく無いのではないでしょうか?
ここではそんな退職金の制度について説明していきます。
退職金は会社の義務ではない
退職金とは企業から退職の際に支払われる手当のことです。
定年退職と共に支払われるものと考えられがちですが、退職金は法律で定められている義務ではありません。企業毎に就業規則で定められているものです。
そうはいっても人事院の調査によると、全国の50人以上従業員がいる企業の9割以上に退職金制度があることも事実です。
退職金は今までの積立
退職金には主に2つの制度があります。
退職一時金制度
いわゆる「退職金」のイメージです。 一括で全額を受け取ります。 受け取った額の殆どが非課税になります。
企業年金制度
企業が年金を支給する制度のことです。 1回で全てを支払うのではなく、長期的に支給されるものを指します。
退職金の代わりになる!フリーランスが利用すべき2つの制度
フリーランスだけでなく、会社員も退職金に関する知識が必要であることは前述の通りですが、具体的にはどのような退職金制度があるのでしょうか?
ここからは、特にフリーランスが活用すべき退職金制度として
小規模企業共済
中小企業倒産防止共済
の2つを紹介していきます。
小規模企業共済
多くのフリーランスに退職金の代わりとして活用されているのが、小規模企業共済です。
この制度は昭和40年に作られ、小規模の事業を営む経営者や個人事業主が廃業に陥った際の備えとなること、社会保険や労働保険などの会社員と比較した場合に差が生じてしまいやすい各種制度を充足することが目的とされています。
小規模企業共済のメリットは後述しますが、平成27年の段階で160万件の在籍数を誇る、フリーランスがもっとも活用しやすい退職金制度と言えます。
中小企業倒産防止共済
取引先の倒産などによって売掛金が回収できなくなった場合の備えとして活用されることが多いものの、退職金の代わりとしても使える制度が中小企業倒産防止共済です。
経営セーフティ共済とも呼ばれ、中小企業の経営を安定させるための対策として用意された制度です。
そのため、回収困難になった金額、または掛け金の10倍までの金額の小さい方を受け取ることができるという条件が設けられているものの、積み立てられる金額は800万円が上限となっています。
貯金と併用して中小企業倒産防止共済を活用するフリーランスも珍しくなく、「解約後の生活に十分な金額が用意できるかどうか」については、綿密な計算が必要と言えるでしょう。
フリーランスの退職金にはどちらがおすすめ?小規模企業共済と中小企業倒産防止共済の違い
同じ退職金の準備という目的でも活用できる制度はいくつかあり、多くのフリーランスに活用されている制度が「小規模企業共済」と「中小企業倒産防止共済」の2つです。 それぞれに設けられた背景や目的が異なることは前述の通りですが、実はそれ以外にもいくつかの違いがあります。
フリーランスとして独立する方が思い描く、退職金の準備の仕方を実現できるよう
年間の掛金とその裁量について
受け取る金額について
という2つの観点から、小規模企業共済と中小企業倒産防止共済の違いを解説していきます。
年間の掛金とその裁量について
小規模企業共済法と中小企業倒産防止共済の、1つ目の大きな違いが「年間の掛金とその裁量」です。
年間の掛金は以下のようにルール化されています。
小規模企業共済:1,000円〜70,000円/月(年間最大84万円・500円単位で調整可能)
中小企業倒産防止共済:5,000円〜200,000円/月(年間最大240万円・5,000円単位で調整可能)
退職金の準備をしながら、事業の展開もしていかなければならないフリーランスにとって、「どのくらいのペースで積み立てていくべきか?」は非常に大きな問題と言えます。 特に事業を立ち上げたばかりのフリーランスにとっては、小規模企業共済のほうが都合がいいケースが多いとも言えるでしょう。
受け取る金額
小規模企業共済法と中小企業倒産防止共済の2つ目の違いが、「受け取る金額」です。 いずれの退職金制度も、解約時に積み立てた金額を受け取れることに変わりはありません。
しかし、中小企業倒産防止共済には「経営の安定」という第一の目的があるため、仮に取引先の倒産などによる回収不可金が生じるような事態に陥らなかった場合には、800万円以上の金額を受け取ることができません。
さらに、自己都合の途中解約の場合は積み立てた金額の100%が上限となり、中小機構が運用を行う小規模企業共済との大きな違いとなります。
フリーランスが退職金の代わりに利用できる小規模企業共済のメリットとデメリット
独立したフリーランスが、それぞれの考え方や立場によって退職金制度を選べることは間違いありませんが、「事業を辞めた後の生活を保証する」という目的であれば小規模企業共済を利用すべきです。
ここからは、いくつかある退職金制度の中から、小規模企業共済のメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
メリット
小規模企業共済のメリットは、
節税対策にも活用できる
資金繰り対策にも活用できる
の2つです。 中小企業倒産防止共済と比較した際に、退職後の生活を保証するという意味合いが強いとされる小規模企業共済ですが、フリーランスの資金繰りにも活用できる制度でもあるわけです。
節税対策になる
小規模企業共済の1つ目のメリットが、「節税対策にも活用できる」というものです。
退職金として積み立てている掛金は、すべて所得控除の対象とすることができます。
例えば、掛金を70,000円としているケースでは年間840,000円を節税に活用することができます。
また、小規模企業共済を積み立て、分割で受け取る際の金額は雑所得として、一括の場合には退職所得として計上することができるため、掛金と受け取る金額の双方を節税に活用できるわけです。
資金繰り対策になる
小規模企業共済の他に、経営の安定を目的とした中小企業倒産防止共済も退職金の備えとして活用できることは前述の通りです。
しかし、実は小規模企業共済も、経営の安定に活用できる退職金の側面をもっています。
具体的には、掛金の範囲内であれば担保や保証人を必要とせずに、事業資金として活用することができます。
掛金の範囲内であるため、中小企業倒産防止共済よりも金額が小さくなりがちではありますが、確実な経営を行いたいフリーランスにとっては知っておくべき制度と言えます。
デメリット
特に着実な事業展開を行いたいフリーランスにおすすめする小規模企業共済ですが、デメリットもあります。
小規模企業共済には、
6ヶ月未満の場合は掛け捨てになる
元本割れのリスクが有る
という2つのデメリットが存在しています。
6ヶ月未満の場合は掛け捨てになる
小規模企業共済は加入後6ヵ月未満で解約した場合、全額掛け捨てとなります。
1,000円から70,000万円の間で500円単位で掛金の調整を行えるものの、節税効果を狙うなどの理由で金額を積み立てる金額を大きくしすぎてしまうと、事業資金がショートしてしまうことに繋がりかねず、途中解約となれば全額没収となってしまいます。
元本割れのリスクが有る
会社員と違い「退職金を受け取るタイミング自分で決められる」のも、フリーランスの特徴です。
ただし、小規模企業共済は加入後20年を経過しない限りは、元本割れするため注意が必要です。 支給割合は以下のようになっており、
12ヵ月から84ヵ月:80% 84ヵ月〜90ヵ月:80.5% 90ヵ月〜96ヵ月:81.25% 240ヵ月〜246ヵ月:100%
中小機構が運用することで21年目からはプラスに転じるものの、加入後20年以上は継続して積み立てていかなければなりません。
まとめ:フリーランスは退職金の代わりに小規模企業共済を利用しよう
ここまでの内容をまとめます。 企業勤めのフリーランスであれば退職する際に、退職金が支払われる場合がほとんどです。
この退職金はかなり高額になるため、人生設計に組み込んでいる人もいるかもしれません。
しかし、フリーランスにはこの退職金制度はありません。 そのため、退職金に代わり、自分で積み立てる
小規模企業共済
中小企業倒産防止共済
のどちらかの制度を使用する必要があります。
両者の違いは
掛け金
受け取る額
ですが、中小企業倒産防止共済は中小企業の倒産防止を目的にしているため個人のフリーランスには小規模企業共済の方が適しています。
小規模企業共済のメリットは
節税対策
資金繰り対策
の2つです。一方、デメリットは
6ヶ月未満の場合は掛け捨てになる
元本割れのリスクがある
の2つです。
この記事ではフリーランスが退職金をもらうにはどうすれば良いのかという方法を説明しました。 60歳を迎えた時にまとまったお金がほしいというフリーランスの方は是非検討してみてください。
ここまでお読み頂きありがとうございました。