【専門家が解説】インボイス制度を知らないとフリーランスエンジニアはこれだけ損をする!
2021.07.27
2023年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」が導入されます。しかし、正直なところインボイス制度が何なのか、どう自分に影響するかがわからない方も多いはず。
結論から言うと、インボイス制度によって消費税を支払う課税事業者にならないと、フリーランス(個人事業主)は案件が獲得しにくくなってしまう、契約が打ち切りになってしまう可能性があります。
安定して仕事を得るためにも、課税事業者(適格請求書発行事業者)になるか否か、インボイス制度が始まる2023年10月までに決めなくてはいけません。
この記事では、フリーランスが考えるべきインボイス制度について、概要からやるべきことまでをわかりやすく解説していきます。特に他の職種に比べて高単価案件の多いフリーランスエンジニアは、知っておかないと大きく損をする可能性があるので必見の内容です。
インボイス制度を知らないとフリーランスエンジニアは損をする?
インボイス制度が導入されると、フリーランスエンジニアには下記2点の懸念がでてきます。
企業から案件がもらえなくなってしまう
消費税分の売上が下がってしまう
インボイス制度は売上のある企業に大きく影響するため、企業から高単価案件を依頼されることの多いフリーランスエンジニアが損をしやすくなります。
たとえば、フリーランスエンジニアがインボイス制度を知らないと収入が10%近く減る可能性もあります。そのため、特に高単価案件を受注しやすいエンジニアには押さえていただきたい制度となります。
特に、年商を1000万円以内に調整していた方は注意が必要です。今までは年商1000万円以下であれば、消費税の納付が免除される「免税事業者」でも支障はありませんでしたが、インボイス制度によって免税事業者のデメリットが発生してしまいます。
高所得のフリーランスエンジニアは免税事業者のままだと案件打ち切りのリスクも伴います。そのため、インボイス制度について自身で知識をつけるか、エージェント・税理士に相談するのが安全です。
インボイス制度とは
「インボイス制度」とは仕入税額控除の方式のことで、「インボイス(請求書や納品書)」に記載された税額のみを仕入として控除することができる制度です。インボイスを発行するためには課税事業者(適格請求書発行事業者)に登録をする必要があります。
フリーランスの多くは「免税事業者」のため、課税事業者に登録するか、免税事業者のインボイス制度導入後のデメリットについて知らなければいけません。
従来の消費税課税方式
現在は1年間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税が免除されていました。ほとんどのフリーランスの方は、消費税の納税が免除された「免税事業者」にあたるでしょう。
そして、課税事業者が納税する消費税納付税額の計算は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて求めます。この支払った消費税を差し引ける計算が「仕入税額控除」です。
これまで企業(課税事業者)が消費税を納付する際は、免税事業者から仕入れをしていた場合でも仕入税額控除を受けることができていました。
免税事業者については国税庁が動画と図解でまとめてくれていますので、気になる方は覗いてみてください。
引用:消費税!今から学ぼう!インボイス塾! ~第1回 インボイス制度概要編(全4回)~
インボイス制度でフリーランスは何が変わるのか
2023年10月から導入されるインボイス制度によって、仕入税額控除には「インボイス」が必要になります。
インボイス(適格請求書)を発行できるのは、「課税事業者(適格請求書発行事業者)」に限られますが、多くのフリーランスが該当するであろう「免税事業者」のままではインボイスの発行ができません。
つまり、発注者である企業(課税事業者)やフリーランスの中でも免税事業者であるフリーランスの方(=非適格請求書発行事業者)に発注した場合、消費税の仕入税額控除が受けられず、これまで免税対象とされてきた消費税分を企業側が消費税分を多く払う必要が出てきてしまいます。
インボイス制度を知らないと生じるフリーランスエンジニアの懸念
では、インボイス制度によって課税事業者となるフリーランスには、免税事業者であるフリーランスの方と比べ、どのような影響が出るのでしょうか。懸念される影響は2つあります。
1.免税事業者の場合、案件が受けにくくなる
2.課税事業者になった場合、消費税支払いの義務が発生する
免税事業者の場合、案件が受けにくくなる
企業側が案件を依頼するフリーランスの方が課税事業者(適格請求書発行事業者)ではない場合、企業は仕入税額控除が受けられずに損をしてしまうため、免税事業者のフリーランスの方が案件を受けにくくなってしまう可能性があります。また、実質的な値上げになり案件打ち切りになる可能性も。
フリーランスは企業との取引が不可能になるとまでは言いませんが、別の課税事業者に転換したフリーランスの方と比較すると、免税事業者のフリーランスの方は評価が低くなってしまうことが懸念されます。
課税事業者になった場合、消費税支払いの義務が発生する
インボイスが発行できる課税事業者(適格請求書発行事業者)になった場合は、消費税を支払う義務が生じます。
年間の課税売上高が1,000万円以下であれば、今までは消費税の10%分がそのまま収入になっていました。しかし課税事業者になれば消費税を支払う義務があり、単純計算で課税売上の10%分は収入が減ってしまいます。
インボイス制度でフリーランスエンジニアが必要な対策は主に2つ
インボイスが発行できない免税事業者の場合、インボイス制度によってフリーランスの活動に大きな影響が出る可能性があります。そこで、インボイス制度が開始する際に取るべき対策を2つご紹介します。
免税事業者のまま、消費税分を値下げ交渉する
自ら税務署で登録して課税事業者になる
免税事業者のまま、消費税分を値下げ交渉する
1つ目の対策は、自身は免税事業者として活動しながら、発注者である企業側が負担する消費税額分を値下げして、案件の獲得や継続交渉をすることです。
インボイス制度によって、発注企業側はは、消費税の控除が受けられずに仕入れ(免税事業者への支払い)に対する消費税分が損失になってしまうことです。そのため、消費税分の費用を値下げすれば企業側は、免税事業者にも案件を依頼してくれる可能性が上がります。
自ら税務署で登録して課税事業者になる
インボイス制度の開始に合わせて、課税事業者(適格請求書発行事業者)になることも対策の1つです。
課税事業者になれば、インボイスが発行できるため企業からの案件が受けにくくなる懸念もなくなります。本来、消費税は納税するべきものなので、今まで消費税分の得をしていたと考えれば損をした気持ちにはならなそうです。
一方で、先にも挙げたとおり、課税事業者は消費税の支払いが必要なため消費税分の10%の収入が減ってしまいます。また、課税事業者になるための申請、税務署への申告手続きや支払いの業務も発生するので注意が必要です。
課税事業者(適格請求書発行事業者)には、2021年10月1日以降に「登録申請書」を提出する必要があります。自分で手続を行なう方は国税庁ホームページの「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度) 申請手続」をご確認ください。
参考:国税庁ホームページの「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度) 申請手続」
インボイス制度が始まる今のタイミングで外部の力を借りるのもオススメ
インボイス制度が始まるタイミングで、フリーランスはファイナンス面や営業面で外部の力を借りる検討を始めても良いと思います。
これまで紹介してきたように、インボイス制度は複雑です。自分で調べることが増えたり、課税事業者になるには、各種手続きが必要になります。また免税事業者のままでいるとしても、発注企業から報酬単価の引き下げを求められ値下げに応じるか、単価を維持するための交渉が必要になるといったケースも出てくるでしょう。
しかし、今から税金を考慮して案件獲得を考えるのは非常にハードルが高いですよね。また、フリーランスの中には交渉が苦手な方や、本業が忙しくて事務作業まで手が回らない方も多いでしょう。専門知識があるフリーランスが本業以外に時間を使うのは避けたいところ。
そのためインボイス制度が始まる前に、エージェントなど案件獲得のプロに相談するのもオススメです。フリーランスエンジニアの営業やキャリア、ファイナンス支援を行なう「フリエン」に頼ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
インボイス制度についてまとめると、下記になります。
インボイス制度は2023年10月から導入される仕入税額控除の方式のこと
企業は免税事業者に発注をすると、消費税の仕入税額控除が受けられずに負担が増える
フリーランスで免税事業者の場合、案件が受けにくくなる可能性がある
そこでフリーランスが取るべき対策は下記の2つのどちらかです。
免税事業者のまま、消費税分を値下げ交渉する
自ら税務署で登録して課税事業者になる
いまは聞きかじる程度の「インボイス制度」ですが、実は案件獲得に大きく関わり、ないがしろにすると収入にダイレクトに影響します。
まず、税理士がいる方は必ず相談をしましょう。税理士がいない方でも、外部にファイナンスの相談をしてみることをおすすめします。
もしインボイス制度による案件や収入の減少が不安であれば、フリーランスエンジニアのキャリアや営業を支援するフリエンに頼ってみてください。また、案件紹介だけではなく、ファイナンス面などのご相談にも対応します。
税金や仕事での悩みや不安がある方は、1人で抱え込まないでエンジニアキャリア支援のプロに相談してみてはいかがでしょうか。
※新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、フリエンを運営するアン・コンサルティング株式会社では、WEB(Google meet、ZOOMなど)ならびにお電話によるご面談(カウンセリング)をご案内差し上げております。